猪鼻輪業さんが90有余年の歴史に幕を閉じられます。
令和3(2021)年12月25日(土)、この年末をもって閉店する猪鼻輪業さんが、甲州街道を見守り続けてきた看板を撤去すると聞き、当日現場に伺いました。
この日は、夜更け過ぎに降った雨が止んで、朝からまぶしいくらいの晴天。午前10時に作業を開始すると聞き、現地に赴くと、すでに作業を見届けようと集まった有志数名。店主の猪鼻洋助さんのご親族の方々が集まると、作業開の前にまず記念撮影。お店をバックに、ご親族が肩を寄せ合い集まるところを、甲州街道の反対側からカメラマンが車の往来に気を払いながら撮影します。撮影が終わって、いよいよ看板撤去作業開始。高さのある脚立を下でおふたりの息子さんが支え、洋助さんが看板の文字をドライバーで一文字一文字、慎重に取り外していきます。下ではその様子を写真に収める人、談笑する人で、とても賑やか。看板の文字は「業」、「輪」、「鼻」の順番に消え、最後に「猪」がされた時には、「嗚呼」という、淋しさとも喜びともつかない声と拍手が上がりました。
90有余年の月日に渡り、甲州街道を見守り続けてきた猪鼻輪業さん。「良品奉仕」をモットーに営んできたお店の前には、いつもお客さんと会話したり、作業する猪鼻さんの姿がありました。地元に根付いたお店がまたひとつ失われるのは、とてもさびしいですが、今後はゆっくり、体に気をつけて過ごしていただきたいです。
<補足>猪鼻輪業は現店主の父猪鼻要次氏により昭和4(1929)年12月に現日野警察署(下河原<したがわら>)付近に開業した。しかし、戦時中の空襲で罹災し、すでに確保していた谷戸にて仮住まいする一方、仲町にあった中島雑貨店の好意で、倉庫を借り受け営業を再開した。その後、本陣脇の現在地に移り本格営業に至った。そして令和3(2021)年12月末をもって90有余年の歴史に幕を閉じることになったとのことです。(猪鼻洋助氏談)